2009
12.16

しずおかユニバーサルデザインの絆in浜松

発表

しずおかユニバーサルデザインの絆in浜松
「第三回国際ユニバーサルデザイン会議2010 in はままつ」プレイベントとして、「しずおかユニバーサルデザインの絆in浜松」が開催されました。12月4日に開催されたパネルトーク「次の世代に今できること」では、ぴっぴの原田もパネリストとして登壇しました。
参加者は以下の方々です:
コーディネーター:古瀬 敏 氏(静岡文化芸術大学 教授)
パネリスト: 樋口 恵子 氏(評論家)、赤池 学 氏(株)ユニバーサルデザイン総合研究所長)、原田 博子 氏(はままつ子育てネットワークぴっぴ理事長)、高野 裕章 氏(富士宮市都市整備部都市計画課)
赤池氏からは、キッズデザイン賞についての発表がありました。これは、子ども目線で物をつくる=子どもを産み育てやすいデザインを顕彰するもので、たとえば「通気孔の開いたキャップ」(誤飲による死亡を防ぐ)、「プールサイドの不安定さをなくしたビニールプール」(プールサイドが傾くことで転倒し、後頭部を打つことを防ぐ)など、子どもの事故の現状を踏まえて改善や改良を加えたデザインが多数受賞しています。
高野氏からは、富士宮市の新公共交通システム「宮バス」「宮タク」についての発表がありました。「宮バス」は、バリアフリー車両の導入や、バス停オーナー制度など、さまざまな試みを取り入れた地域の足です。また、乗り合い型の「宮タク」は、地域の高齢者が困らないためのセーフティネット的存在を目指しています。マイカー依存型の社会から公共交通利用型の社会への変換という大きな目標を掲げ、着実な活動が実を結んでいるようです。
また、ぴっぴ原田からは、浜松で暮らす親子に「暮らしやすい」と感じてもらうための情報提供サイト「はままつ子育てネットワークぴっぴ」が官民協働で生み出された成り立ちや、団体としてのぴっぴがこれまで行ってきた「子どもを守る防災ネットワーク」などの事業に関する発表がありました。
これらの発表を経て、各パネリストから活発に意見が発表されました。
「人生100年社会の創造」を提唱する樋口氏からは、「子どもや高齢者はこれまで、守られる存在、サービスを受ける存在であると認識されていたが、これからは、子どもは子どもなりに動き、高齢者もそれなりに動いて互いに交流する、地域の一員であるという視点を」と、ミネソタ州の町の防災活動の例を挙げて提言がありました。
また、赤池氏からは、目が見えづらい人が開発した“黒いまな板”の例をとり、「障がい者だからこそ気づくことがあり、健常者には無いセンスでバリア・バリューな製品を開発することが可能。皆がプレイヤーになれる社会を」「未来の子どもたちがこんなことで悩んではかわいそうだ、という観点で、未来の子孫へのユニバーサルデザインを考えてほしいと思います」との意見がありました。
高野氏からは「公共交通機関もユニバーサルデザインの概念を取り入れてゆくべき」との提言がありました。
ぴっぴの原田からは「ユニバーサルデザインという言葉だけは知っている、という人が多いようですが、ユニバーサルデザインとバリアフリーの概念が混同されているのでは」「こうなったらいいな、ああなったらいいな、という希望を声に出して誰かに言う、発信していくことが重要」という意見が発表されました。
会場の参加者からも多数のコメントが発表されましたが、中でも特別講演の講師として招聘されたスティーブ・デモス氏の発言が印象に残りました。
「ユニバーサルデザインを語るとき、障がいのことを言ってはいけない、というのが私の信条です。人生のうちで、子どもから大人を経て老人まで、あるいは病気や怪我などで、その時々で能力が変化するのは当然のことです。重要なのは、能力というのは人間がつくったものさしである、ということです。たとえば、人間の足の長さが1mあったら、階段の高さはそれに応じて1mになるでしょう。実際のところ、能力というものには非常に幅があり、人間がそれを規定しているだけだということを忘れてはならないでしょう」
こうして終始、熱気に包まれたパネルトークとなりました。
他にも研究発表会やコンサート、各種事例展示など、総合的な内容の催しだったようです。子育て中の人も参加できるようにと、託児も用意されていましたが、利用する人がほとんどいなかったということで、それについては残念に思いました。
ユニバーサルデザインについて考えることは、私たち自身の現在や将来、そして私たちの子どもの未来の暮らしを考えることに他なりません。来年秋には「第3回国際ユニバーサルデザイン会議2010inはままつ」が開催され、誰でも無料で入場できるので、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。