2007
08.01

日野原重明先生の授業

取材

7月14日土曜日、予定より少し早めの午前10時30分ごろから、浜松市立有玉小学校で4年生の希望者36名を対象に、聖路加国際病院理事長であり名誉院長、今年11月で96歳の現役医師の日野原重明先生が、「いのちの授業」を行いました。
「新老人の会」静岡支部創立1周年記念として、新老人の会会長、日野原重明先生の講演会を企画したところ、日野原先生から「自分のライフワークのひとつである『いのちの授業』を浜松で実現したい」という提案から、有玉小学校で実現したということす。
日野原重明先生
子どもたちの歌う校歌に迎えられて、日野原先生が教室に登場されました。しかも、校歌に合わせて日野原先生が指揮をするというアドリブ付きでした。こうして「いのちの授業」が始まったのです。
子どもたちに、五感を使って「いのち」とは何かを考えさせ、「いのち」はどこにあるものなのか意見を出しあいました。ほとんどの子どもたちが、「いのち」とは、「心臓」であると答える中、日野原先生は、「心臓」はいのちではなくて器であり、ポンプであるとおっしゃいました。
「いのち」とは、目に見えないものであるけれど大切なものであり、それは「自分が使える時間」、つまり「寿命」であるとおっしゃいました。その「時間」は、子どもの頃は寝て、起きて、顔を洗って、食事して、勉強して、遊んで・・・と、自分のためだけに遣われる時間であるが、将来おとなになったら、自分以外のことで時間を使うようになってほしいと話されました。
日野原重明先生
この授業の前夜、日野原先生は明け方4時まで仕事をして6時に起きて新幹線に乗り浜松にみえたそうです。本当に95歳なのか、疑ってしまうほどの元気に、参観していた大人たちも驚いていたと思います。
日野原先生は、
「このような元気な老人がいることを子どもたちに見せることで、子どもたちにいくつまで生きたいか質問すると、だいたい95歳かそれ以上の年齢を目標にする」とおっしゃいました。
確かに、この授業を受けた子どもたちにこの質問をすると、ほとんどが「100歳」「95歳」と答えていました。先生ご自身が、「いのち」を大切に生きているモデルなんだと実感しました。
この授業の詳細は、メールマガジン【Pippi TIMES】第54号(8月8日発行)に掲載しますのでご覧下さい。
まさに「只者ではない」としか言い表せない先生でした。校歌にあわせて指揮する時に、手が高く上がるのは、「“ウン十肩”で手が上がらない」と、肩をミシミシいわせて半泣きの私とは大違い。授業中、一度も腰掛けることなく歩き回りながら子どもたちと話をする先生は、確かに私の年齢の倍以上も生きてきたそうですが、1時間程度の授業を教室後方でモジモジしながら参観している私の細胞は、「お前はすでに死んでいる」状態で、愕然としてしまうほどでした。テレビや本で見たことのある有名人を目の前に、あまりの緊張から声が小さくなってしまった子どもたちに比べ、先生の声は張りのある大きな声でした。
日野原重明先生
取材に行く前は、私も有名人を生で見られるというミーハーな気持ちでしたが、“生・日野原重明先生”を見ていたら、95年間の功績と95歳でありながらこんなにも元気でいられる存在に圧倒されました。きっと、子どもたちにとっても同じではないかと思います。
そんな日野原先生が、授業を受けている子どもたちだけでなく、参観している大人たちも圧倒するパワーで伝えたかったことが「いのちの大切さ」でした。「大切ないのちである大切な時間」を、大人になったらよく考えて使うように、1/2成人式である10歳の子どもの時に考えてみようということだったと思います。
まずは、そのお手本として、日野原先生の存在がありました。すでに大人となっている私も、残りの人生の時間の使い方、つまりいのちの使い方をもう一度考えてみるきっかけになったと思います。
【日野原重明 先生 プロフィール】
1911年、山口県生まれ。京都帝国大学医学部卒業。現在は聖路加国際病院理事長・同名誉院長、聖路加看護学園理事長を務める。
99年文化功労者、2005年文化勲章受賞。
主な著書 (題名をクリックするとAmazonで本の詳細を確認することができます。)
・十歳のきみへ―九十五歳のわたしから
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・生きかた上手
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・こどもに命の大切さを伝える
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・生きるのが楽しくなる15の習慣 (講談社プラスアルファ文庫)
 講談社+α文庫  ¥680
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