03.27
子育て世代が区の再編について考える
4月7日、浜松市長選と一緒に「区の再編についての住民投票」が行われます。市のホームページを見ると、浜松市が区の再編を進める理由は「人口減少、少子高齢化の更なる進行、インフラ更新費用や社会保障費の増大などの課題に対し、市の財政が健全な今、できるだけ早く、将来を見据えたサービスの維持・強化に取り組む必要があります。」とし、大きな改革が必要だとされています。
再編は3区案が提示されており、その賛否についての住民投票となります。自治会などへの説明会が実施されていましたが、区の再編について「もっと知りたい」と考えているのは、子育て世代も同じです。行政サービスの変更や公共施設の増減があれば、子育て関係の手続きや生活圏が変わる可能性があります。また子育て世代には転入者も多く、平成17年の合併や平成19年の政令指定都市移行の経緯もわからない中で判断しなければなりません。詳しく知りたくても小さな子ども連れでは各区での説明会にも参加しづらく、知る機会が少ないのが実情という声もありました。
こうした声から、ぴっぴでは、子育て真っ最中の家庭にも情報を届けたいと考えました。そこで、その世代の取材特派員を集め、出前講座として市に依頼。急遽、来ていただき話を聞きました。以下はその場での質問と回答です。時間の制約もありましたが、参考に読んでいただければ幸いです。
参加者からの質問と回答
1. 住民投票についての質問
・いつ住民投票の実施が決まったのか。私はこの住民投票についてよく知らなかった。広報はままつでも取り上げられているとのことだが、広報効果が低いのではないか。(中区在住パパ)
・今までの広報など見ているが、今回配布(説明会用)の資料を見たことがない。どこで開示されているのか。また、情報をこちらから探して取りに行かなければ目にすることがないという現状に問題を感じる。(天竜区在住ママ)
12月に住民投票条例が成立して、実施が決まった。広報はままつでは、2~4ページ確保するのがやっとなので、丁寧な説明ができないことから、御理解いただくことが難しいかもしれない。説明会は、御要望いただいた約50の自治会等でも実施している。今回のように若い方の御意見を伺える場も、貴重だと思っている。資料は市のホームページで参照できるもの。情報を目にする機会がないという点については、今後も改善していく。
住民投票用紙には質問1に3区再編に賛成か反対か記載されており、質問2には反対なら平成33年1月1日までに区再編することに対して賛成か反対かという質問が設けられているが、今回質問1で反対多数、質問2で賛成多数になった際、今後どのような区再編が考えられるか。(中区在住パパ)
住民投票について、今回は区ごとに賛否が出るので、結果についても様々なパターンが考えられる。まず全体として賛成、全区でも賛成の場合。次に全体としては賛成であってもある区では反対が上回る場合、全体として反対の場合等。この結果を市長と議会が尊重することになっている。
2. 手続きや子育て関係のサービスについて
最近、引っ越しの手続をしに行ったところ、平日にも関わらず待ち時間が45分と言われた。私のような子連れで45分も待たされるのは大変である。区の再編が成った場合、待ち時間が更に延びるようでは困るが再編後の状況はどうか。(南区在住ママ)
窓口の職員は削らないので、待ち時間が延びることはない。
個人的に気になるのは、子育てに関することである。(中区在住ママ)
親子すこやか相談については、保健師や窓口の職員数は減らないので、区の再編という理由での影響はないと思われる。もし変更がある場合は、チラシやぴっぴのホームページでも案内していくことになると思う。
3. 3区案やそれぞれの区の存続について
合区のデメリットは。(南区在住ママ)
例えば北区役所が行政センターに移行した場合、99.8%の手続については、これまでどおり行うことができるが、浄化槽設置費補助金申請等0.2%の事務については、区役所までお越しいただく必要が生じる。また、区名が変わると住居表示も変更していただくこととなるため、一時的なものではあるが、コストが生じる。
3区のうち浜北区を残す理由として副都心として位置付けると記載されているが詳しく教えてほしい。(中区在住パパ)
浜北の副都心という表現は、合併前の平成15年ぐらいから使われ出したものである。合併にあたり、浜北は合併後の浜松市において、場所も含めて重要であるということを位置付けた。このあたりが都心であるとすれば、浜北が副都心で拠点であると考えることも自然であり、施設の整備等も考えた。
説明の中で「天竜区は過疎化対策もありひとつの区として残すことにした」ということだが、どういう意味なのか。天竜区民なので、具体的なことを教えてほしい。(天竜区在住ママ)
浜松市の人口は減少していくのだが、その中でも天竜区の人口減少は著しい。ただしこのような状況に手をこまねいているのではなく、例えば佐久間町では市の職員がアワビの養殖を始めたり、春野町では民間企業がチョウザメの養殖を始めたりする等、新たな取組が始まっている。天竜区は良い意味で中区と事情が異なることから、我々も配慮している。区としてしっかりと残し、区長が居た方が、様々な取組が進められるものと思われる。
区の再編が成った場合、区名はどうなるのか。浜北区は独立して浜北区のままでいたい。(浜北区在住ママ)
南側の5区については、合区するのでそのままというわけにはいかないが、浜北区と天竜区については、そのまま残るのでそのままと考えることが自然だと思う。区名の変更にもコストがかかる。
4. 削減効果や財政について
削減効果7億円の内訳を教えて欲しい。3区を比較した場合、天竜区の人口と面積がアンバランスである。遠鉄バスも手を引く等している。区の再編をして大丈夫なのか。(中区在住ママ)
7億円の削減効果の内訳については、事務経費の削減分として1,200万円と、90人の職員削減分として、人件費、職員1人790万円×90人=7億1,100万円が効果額となるため、合計で約7億円としている。
3区を比較した場合のアンバランスについて、東京都の特別区の場合、経済的にそれぞれ独立して格差があるため、区によって若干サービスの提供に差がある。また静岡県内の自治体も、規模や財政格差があるが、ほぼ同一のサービスを提供できている。これに対して浜松市の区の場合、サービスの提供主体が同じ、お財布も同じであることから、サービスの差は生じないと言える。遠鉄バスについては民間企業のことで、儲かる路線であれば維持されるし、採算が取れないのであれば廃線になることもある。これは区の再編というよりも地域振興の問題である。
7億円をどのように使っていくのか具体的な話を聞きたい。(中区在住ママ)
協働センターの再任用コミュニティ担当職員を、フットワークの軽い若手の正規職員に交代していくために1.5億円を使う。残りの5.5億円の使い方は、今提案するのではなく、予算の自由度を残したまま、市長や議会に判断してもらった方が良いと思っている。市長は子ども第一主義も掲げている。
議会で2区案や3区案が議論された、という話が出たが、2区案の場合の削減効果はどれぐらいなのか。区の再編を行えば、これからの市の経費を賄えるのか。(南区在住ママ)
2区案では、10億円超と試算した。これからの市の経費については、区の再編だけでは賄えない。インフラの老朽化対応だけでも、漫然と更新していけば、毎年支出が100億円増える、と言われている。
このような状況の中、7億円の浮いたお金は大きい。もちろんその他にも様々な取組を進めている。高齢者のバス・タクシー券を廃止したり、障がい者のバス・タクシー券のメニューを見直したりした。ただし、この調整は大変ハードで、効果もそれほど大きいというわけではない。これに対し、区の再編はソフトランディングで、継続的な効果も大きいと考えている。
子育て世代が感じる期待と不安
今回の説明会は、浜松の課題や市の考え方を知る貴重な機会となりました。説明会後に感じたことを聞き取ったところ、それぞれの立場から、再編から創出される財源への期待や、新たに生まれる課題への不安などがありました。
- 自分が浜松に来た時はすでに政令指定都市化しており、前回の議論や浜松の地域性をしっかり理解しているわけではありませんが、今回の区再編説明をきっかけに浜松の課題や各地域の考え方を新たに理解出来るきっかけとなるような気がします。市の方は区が再編されてもサービス低下は無いといっていましたが、行政のサービスとは別に私達の生活の利便性の変化は思わぬ別のところで起きるかもしれないですね。また新たに生まれる7億円の使い道は市の方々もまだ決まっていないというのが印象的でした。(中区在住パパ)
- 印象に残ったのは、子ども世代のために、という言葉でした。少子高齢化、老朽化するインフラ整備費もあり、財源が足りなくなることはわかっている。個人的には、今後の予算の帳尻合わせにあてがわれればそれでいいのではと思います。
私は天竜市生まれの天竜区民です。合併された側ですが、市役所がそのまま区役所になったのでほぼ生活に変化はありませんでした。過疎化する土地に住んでいますが、実は住みにくいとか今後住めなくなるのではと思ったことはありません。でも、車で出られる範囲に仕事が無くなったり、車が使えなくなったりすればとても住めません。雇用創出がいちばんの課題だと思っていますが、今回の話を聞きながら、あと数十年でもっと別の課題も見えてくるのだろうなと思いました。(天竜区在住ママ)
また、説明会に参加できなかったママからも、区の再編について感じたことが寄せられています。
- 平成17年の合併により生活が大きく変わりました。合併後に生まれた子どもたちはすっかりなじんでいますが、すべてが“旧浜松市に準じる”で私は今でも戸惑うことがあります。個人的に行政窓口へ行く頻度が多いので、一番の願いは「手続き窓口が遠くならない」ことと「今までと同じサービスが受けられる」です。(旧浜松市以外の地域に在住のママ)
住民投票の結果は「市民の声」として尊重されるという話ですが、投票者の総数が投票資格者の総数50%未満の場合は開票自体がされません。平成27年4月12日 の市長選の投票率は53.56%となっており、今回も同等以上の投票が必要となってきます。投票所で再編の経緯などの質問はできませんので、事前に理解した中で当日を迎える必要があります。浜松の課題を知り、考えた中での投票が、自分たちの子どもの未来を守ることにつながるかもしれませんね。
<参考>
- 浜松市区の再編に関する住民投票について(浜松市)
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/kikaku/jyumin/index.html