10.28
ワイドショーは嘘ばかり
タレント北斗晶の乳がんの話題で乳癌診療を専門とする病院では大混乱が起きています。彼女がどういう心境で、いったい何のために、自分の病気や治療のこと、主治医からの説明をあんなに事細かくブログに書いているのか、ちょっとあきれてしまいますが、問題は、それをいちいち報道するワイドショーやスポーツ新聞の報道姿勢にあると思います。一人の乳がん患者の極めて特殊な病状ですから、多くの人には全く当てはまりません。しかし、ワイドショーを見た多くの女性が、しこりを感じる、ちくちく痛い、胸が張る、などの訴えで、浜松オンコロジーセンターにも連日押し寄せてきます。そんな受診者のほとんどは全く問題なし、心配ないことを説明しています。また、現在、乳がん治療をうけている患者さんで、「テレビで5年生存率50%と聞いて、心配で夜も眠れない。」と泣きながら受診された方もいらっしゃいます。「あなたの場合は、すでにきっちり治療して、ほぼ治ったと思っていてもいいぐらいなんだから、心配しないでください。」と説明され、笑顔で帰って行くのですが、かわいそうに、同じような心配で受診されるかたが跡を絶ちません。
情報を発信するひと(この場合は北斗晶)、伝えるひと(マスコミ)、受け取るひと、そして聞いてパニックに陥るひと(一般人、または乳がん患者)が今回の混乱の主役です。マスコミは視聴率が全てですから、正しい情報を提供しよう、などとは全く考えていません。しかし「テレビで言っていた」というと正しい情報だと、多くの人は考えます。医学番組のふりをした低俗なバラエティー番組もありますね。胸がちくちくすることは乳癌ではなくてもしょっちゅうあることだし、正常の乳腺や肋骨をさわって「しこり」と勘違いすることもおおいですね。また、乳癌は20才代で発症することは多くはありません。このような正しい判断を全ての国民に期待するのは無理だとは思います。だから、朝から時計代わりにテレビを付けっぱなしにしてワイド−ショーを見ないで、テレビのスイッチを切り、出勤前、登校前の時間に家族の対話を深めてみてはいかがでしょうか?