12.22
子どもの一時保育は本当に「使えない」?
「一時保育」とは、認定こども園や保育園で、子どもを一時的に預かってくれるサービスです。保護者の急病や職業訓練などで子どもを見られないとき、またリフレッシュしたいときにも利用できるものです。しかし、実際には「申し込んでも使えなかった」という声が親たちの間で頻繁に聞かれるという状況が続いています。浜松市から情報を預かり、子育て情報サイトぴっぴを運営する団体としては、この問題を取り上げざるをえないと考えました。
「一時保育に子どもを預けられなかった」親たちの声
今年10月、浜松市子育て情報サイトぴっぴ上で「子どもを預けるということ」についてアンケートを実施しました。
その結果、身内以外に子どもを預けることに「抵抗がある」という人は半数以上という数字が。自分の予定を調整したり、夫や祖父母を頼りにしたりすることで、預けなくて済むようにしていることがわかりました。そして、「預けない理由」には、「預ける側の心理面での抵抗」と、「受け入れ側の間口の狭さ」という二つの要因がありました。
「心理面での抵抗」とは、「理由が無いと預けにくい」「預けるのが不安」といったものですが、一度預ける経験をすると、不安や抵抗が解消され、次の利用につながるきっかけになるようです。では、「受け入れ側の間口の狭さ」についてはどのような現状があるのでしょうか。
アンケート内で子どもの預かりをしてくれる施設やサービスを複数あげ、それらのサービスを知っているか質問をしたところ、認定こども園や保育園の一時保育(以下一時保育)と、ファミリー・サポート・センター(以下ファミサポ)は、約8割の人が「知っている」と回答し、認知度が高いことがわかりました。一時保育とファミサポは、預ける理由の制限が少なく、仕事や親の通院などのほかに、講座参加やリフレッシュなど一般的な用事でも利用ができる預け先です。
しかし、最もよく知られている「一時保育」について、「申し込んだが、実際には預けられなかった」とするコメントが目立ちました。自由回答欄に数多く寄せられた「申し込んだのに断られた」というコメントの中からいくつか抜粋して紹介します。
このように、通院や出産など緊急の場合ですら子どもを預けられず、切実に困ったというコメントが数多く寄せられました。中には「一時保育が機能していないのなら(子育て情報サイトぴっぴに)掲載しないで」「本当に受け入れてもらえる園だけ紹介して」などの厳しいコメントもあり、困惑の強さが伝わります。
「預かれない」受け入れ側の事情はどこに?
実際のところはどうなのか、浜松市の幼児教育保育課や、いくつかの園に聞きとりを行ったところ、「一時預かりの受け入れを全くしていないわけではない」とのこと。ですが、「年度当初に待機児童となってしまった子どもたちの受け入れで枠がほぼ埋まってしまう」そうです。
浜松市の認可保育施設の待機児童は4月時点の公表値で168人。11月末現在1393人の入園の申込数(※認可外保育施設利用者の転園希望も含む)に対して募集人数は83人と、多くの人が希望しても入園できない状況が続いています。
一時保育は、就労の場合は週に3日程度までと制約もあるものの、他の預かり先との併用や仕事の調整をしながら正規入園を待つ子どもたちの受け皿になっているため、緊急やリフレッシュのため頼みたい人を受け入れる余裕がなくなっているのです。
「保育士が安全にみられる人数にも限りがあり、お断りをせざるをえないことも多くある」と、どの園も本当に申し訳なさそうに語ります。
待機児童の問題が解決されない状況が、「家庭で子育てをしている親も一時保育を使いづらい」という問題を引き起こしてしまっているようです。
「それでも預けたい」時、知っておきたい選択肢
保育園や認定こども園での一時預かりは、保育士がいるという安心材料があり、また、料金も一日あたり2000円(0~2歳児)ということで、預け先を検討するときには一番の候補になるでしょう。 しかし現状は、必要なときにいつでも預かってもらえるには程遠い状態です。
では、他に選択肢は無いのでしょうか? ぴっぴとしてこれまで数々の相談を受けてきた経験から、以下のような提案が考えられます。
提案1 日時に融通を持たせ、早めに園に打診する
子どもを預かるには、受け入れをする園のほうでも、準備や保育士の手配が必要となります。「この日に一時保育をお願いしたい」という聞き方ではなくて、「来月のどこか一日通院をしたいので預かってもらえる日はないか」と相談の形で話をしてみると、最善策を一緒に考えてもらえるかもしれません。
提案2 認可保育施設にこだわらず、予算に幅を持たせる
認証保育所、企業主導型保育事業所、他認可外保育施設でも、一時保育の受け入れを行っているところがあります。かかる費用はそれぞれですが、良心的な料金設定をしている施設もあります。今年は、一時保育専用の託児所もできています。
提案3 使う予定は無くてもファミサポに登録し、備えておく
理由を問わず預かりができるサービスでは、一時保育のほかに、ファミサポもあります。料金は1時間あたり700円~かかりますが、それでも、1時間当たり1500円~2000円が相場となる民間のベビーシッターよりは費用が抑えられます。利用に至るまで必要な手続きがある( 登録→利用の申し込み→事前打ち合わせ→サポートとなる)ため、「明日預かってほしい」には対応が難しいシステムではありますが、今すぐ必要でなくても登録までをしておけば、いざ必要となった時に電話で申込ができます。
提案4 企業の福利厚生で補助金が出るものがないか探す
勤務先の会社が提携している福利厚生サービスの中に、ベビーシッター、ファミリー・サポート・センターの利用や、認可外保育施設の利用に対して、補助が出るものはありませんか? 提携や利用法については会社の福利厚生担当部署に問い合わせましょう。主なものに以下のサービスがあります。
- ベビーシッター派遣事業公益社団法人全国保育サービス協会
- ベネフィットステーションすくすく倶楽部
- リロクラブ 福利厚生倶楽部
- WELBOX ベビーシッタークーポン
- JTBベネフィット えらべる倶楽部
- リゾル ライフサポート倶楽部
提案5 どうしてもの緊急時は「ショートステイ」を検討する
子どもを預けられる場所の設問では認知度が8%と低かったショートステイですが、家庭において子どもを見ることが一時的に難しくなった場合や緊急に一時的に母子を保護することが必要な場合、児童養護施設等に短期入所し、養育や保護を受けることができます。保護者の病気、出産、看護、冠婚葬祭などの事由が対象になります。こちらも受け入れ定員があり、相談先は区役所社会福祉課となります。
働いている人・働いていない人、どちらを優先するかという問題ではなく、助けを必要としているときに子どもが預かってもらえるような環境が早期に整うような対策が必要です。また、預ける側は「保育士がいて、料金が安く、預けたいときにいつでも預けられる」 といった条件を求め、それが叶えられないと失望しがちですが、受け入れる側にも事情があることを知れば、早めに他の方法に目を向けることができるかもしれません。