2017
07.15

2分の1成人式は子どもたちに必要か?

ぴっぴのニュースクローズアップ

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2bun1seijinshiki.png小学校4年生の学校行事として今や全国的に行われている「2分の1成人式」。浜松でもほぼ全校で行われているのですが、この学校行事について、朝日新聞は、企業が行ったネット調査で約9割の保護者がこの行事の満足度が高いと述べると共に、さまざまな家庭事情に配慮されていないことにも触れ、子ども、保護者それぞれの立場からつらかった体験談についても追記し、論議を呼んでいます。
そこで、ぴっぴでは、「2分の1成人式」の本来の目的について改めて考えてみることにしました。

浜松市の2分の1成人式を行う目的は?

で、子どもの成長を祝う学校行事のひとつとして紹介しました。
その時のインタビューで、教育委員会指導課の先生は「浜松市では、10年ほど前から多くの学校で行われるようになりました。浜松の“人づくり教育”の一環です。子どもたちが自分自身のこれまでを振り返って 親に感謝するとともに、将来に向けての目標や夢を再確認して発表する機会としてとらえています」と言っています。

保護者はどう捉えているのか?

保護者は「2分の1成人式」をどんなふうに捉えているのでしょうか。ぴっぴ周辺の保護者に意見を募ったところ、数々の意見が寄せられました。

2分の1成人式を経験したパパやママたちからの意見

子どもが小学校4年生以上で、実際に2分の1成人式の経験があるパパママから、その時の様子をふりかえり意見をいただきました。
Aさん(ママ):学校の先生の対応次第だと思います。両親そろっていない家庭の子どもは苦痛を覚えるだなんて、おかしな話です。親を喜ばせるための行事とせずに、自分の将来を見据えるための行事としていけばいいのではないでしょうか。
Bさん(ママ):思春期を前に、今までの自分を振り返り自分の気持ちを人前で発表し、周りの人に感謝を伝える経験は、是非して欲しいです。それを聞くことで、保護者達も子ども達の個性がわかり、自分の子だけでなく他人の子も認め、小学校だからこそ、地域のつながりも強くなって行けばいいなと思います。
また、いろいろな立場や意見の人がいることを小学校、中学校のうちに知ることは必要です。2分の1成人式で自分を振り返った時、感謝したくなるのは、親だけではないですし、2分の1成人式にこだわらずそのような授業を通して、心の教育を是非していただきたいと思います。
Cさん(ママ):私は朝日新聞記事の一番最後にあった「将来の夢を考えたり自分の未来に向けた子どもにとって役立つイベントに」とほぼ同意見です。
客観的に見ると、あそこまでイベント化しなくてもいいんじゃないかな。式を担当する先生によっては、子どもへの配慮具合も異なるでしょうから。学年の団結を高めるなら、運動会や別のイベントもあります。
ただ、今までの人生を振り返ったり親への感謝を表したりするのをやめたとしても、子ども自身がこれからの未来や将来を考える学習としては有効だと思うので、その部分はうまく残してくれたらいいな。
Dさん(ママ):わが家も昨年経験しましたが、式自体は体育館が会場の大きな参観会のような形式で、ダンスあり、歌あり、縄跳びありの、にぎやかな会でした。全校で実施する運動会や音楽会よりも成長した友だちの様子がじっくり見られる、楽しいものでした。記事にあったようなファイルも作成しました。親への手紙については「自分の言葉じゃない感じ」も確かにありました。そこにあまり違和感を持たずに来てしまった自分のぼんやり加減を嘆きつつ、どの子も楽しく準備を進め、自分の好きなことを改めて確認したり見つけたりできるような行事であってくれたらと思います。
Eさん(パパ):親への感謝の言葉もあったが、将来の夢や今後頑張りたいことについて、娘自身がしっかりと考え、自分の言葉でみんなの前で発表できたことに成長を感じました。また、すでに明確な目標を持っている友達の発表を聞くことができたことも、娘にとって良い刺激になったのではないでしょうか。
6~7人のグループ単位で発表が行われた後、保護者から感想を伝えましたが、自分の子どもだけでなく、他の子どもの発表も含めて、将来について良く考えていることを称える感想が多く出され、まわりの大人がみんなの夢の実現を応援していることが伝わったのではないでしょうか。
生い立ちや家庭状況等配慮しないといけない家庭もあるかと思いますが、運営の仕方次第で、子どもの自己肯定感等を育む良い機会となると思いました。

2分の1成人式の経験がないパパママの意見

子どもがまだ小さく、2分の1成人式の経験がない乳幼児のパパママは、どのように感じたでしょうか?
Fさん(ママ):正直なところ、どんな行事もすべての児童が喜ぶものにはならないですが、親のエゴや先生の押し付けがなされる現実があるとすれば残念ですね。
私は子どもに感謝はされたいですが、それを求めることをしないのが親だと思っています。
Gさん(ママ):朝日新聞の記事にあるように、配慮の必要な子どもはいるとは思いますので、学校の先生の配慮に期待したいと思います。けれど、行事として学校で2分の1成人式があるのはよいことだと思います。私は親に感謝の言葉を述べるとか、子どもから感謝の言葉を言ってもらうとかってことはちょっと照れくさくて苦手です。準備は大変そうですが、大変だからこそ、価値ある行事なのかなとも思いますし、楽しみでもあります。
Hさん(ママ):「振り返ることがつらいお子さんがいるから、しない。」となってしまったら、「持久走大会で、学年最下位になるのがつらい…しないでほしい。」と同じで何にもできなくなってしまうような気がします。
正解のない時代を生きていかなければならない子ども達にとって、将来についてよりリアルに考えていくことは、とても大切だと思います。
Iさん(ママ):小・中学生に関わる仕事をしていた経験があります。
2分の1成人式を行事として行うこと自体は賛成です。ただ子どもが自分の成長を振り返ることと、育ててくれた大人への感謝をいっしょにしてほしくありません。
記事でも問題になっているのは、親への感謝を強制する指導があるからではないかと思います。自分が思ってもいないことを自分の意見として発表させられることはとてもつらいものです。そしてごく稀とはいえ、作文を添削するときに子どもの感情にまでつっこんで書き足しや書き直しを要求する先生がいらっしゃいます。
私自身の子どもが大きくなって2分の1成人式をするときには、自分が今までどんなことが好きで、これからどんなことをしていきたいと思うのか、どんなことが印象に残っていて、うれしかったことはなんなのか、そんな手紙をもらいたいです。その中にお母さんありがとうの言葉が自然と入る子もいれば、入らない子、言う気にならない環境の子もいるかもしれません。そしてむしろこちらから、今まで元気に育ってきてくれたことへの感謝の手紙を送りたいです。
Jさん(パパ):親のための、教師のためのイベントとしてお祝いするのは少し違うかなと思いました。 さまざまな背景をもつ家庭があるので、それぞれに配慮することは難しいとは思いますが、子どものためのイベントであるべきだと思います。お母さんに感謝を伝える家庭が多い中、父親が主に家事育児をする専業主夫家庭の子どもはもしかしたら他と違うことを気にしてしまうかも…?

主役は子どもたち自身

「2分の1成人式」について、経験の有無に関わらず、ここに意見をくださった多くの保護者は、子どもと一緒に調べ学習を通して自分の生い立ちを調べることなどから、客観的にわが子の成長をあらためて感じる機会として、肯定的に見ているようです。
けれども、自らの家庭を肯定的に捉えられる環境に置かれている子どもばかりではありません。それなのに、中には「親への感謝」を強要するような行き過ぎた指導が教師にあり、保護者を感動させよう、行事を盛り上げようと力が入るあまりに、お涙頂戴ふうの劇場型の行事になってしまっていることもあるようです。
主役は、子どもたち自身なのですから、決して、保護者のために開かれる行事であってはならないはず。
「2分の1成人式」は、子どもたちにとって、保護者のみならず、地域のたくさんの大人たちから祝福してもらえる場であり、子どもなりにどんな将来の夢や目標を持ちたいかを考え発表する場であってほしいものです。
参考:
『2分の1成人式、広がる 「感謝の言葉」苦にする子も』(5月18日朝刊)
『「2分の1成人式」誰のため? 感動押しつけに違和感も』(6月26日朝刊)