02.06
高橋みかわさん講演会報告
1月28日、高橋 みかわ さんの講演会を開催しました(会場:浜松市地域情報センター)。
高橋さんは、3月11日の東日本大震災の際に仙台で被災し、重度の知的障がいと自閉症を併せもつ息子さんとご家族とともに避難生活を乗り越えました。この経験を基に、著書「大震災 自閉っこ家族のサバイバル」を出版し、大きな反響と支持を得ました。
その高橋さんを仙台から招き直接お話を聞ける機会とあって、講演会への注目度は高く、会場はほぼ満席となりました。
いざ災害が起こり避難生活をしなければならなくなったときでも、自閉症の子どもは一般の避難所に入るとパニックを起こしてしまいます。初めての場所や見知らぬ人が苦手であり、感覚過敏な自閉症の子どもにとって、避難所は苦手な刺激に満ちあふれているからです。では福祉避難所に行けばいいかというと、そこは全介助の必要な高齢者などが大勢いて、自閉っ子が入っていくのは困難です。
震災後、高橋さん一家は在宅で避難生活を送りました。ですが、在宅避難にはさまざまな問題点があります。避難所なら手に入る物資や情報も、在宅では手に入らず、孤立した避難生活です。よほど備蓄をしていない限りは、給水車に水を貰いに行き、並んで物資を受け取り、買い出しをする苦労が続きます。
しかし、自閉っ子の親は「でんと構える」ことが大切、と高橋さんは言います。パニックにならず落ち着くために、水道から水が出ないなら出ないなりの行動パターンを新たに子どもに刷り込みます。また、子どものお気に入りグッズを持たせ、穏やかな声のトーンや話し方で接し、落ち着くための環境を整えます。
その上で高橋さんは、eメールで「みかわや通信」と称したお便りを発行し、他のお母さんたちとつながりあいました。炊き出しや医療などの情報、悩みや困りごとについて共有するのです。ただひたすらに「がんばる」自閉っ子の家族たちと、「一人じゃない!」「愚痴や泣き言も大歓迎」そして「すみません、ではなく、ありがとう、を合言葉に」支え合いました。
こうした体験談をふまえ、高橋さんは「避難所の住み分けを」と提言します。一般の人は体育館、障がいがある人は保健室…といったエリア分け、あるいは建物自体の住み分けがされていれば、自閉症の子どもがいる一家も入れるでしょう。それには、障害特性についても記載した、実用的な“避難所開設・運営マニュアル”を、あらかじめ用意しておくことが必要です。
また、高橋さんは「行政・地域(民生委員)・医療・保護者・在宅支援事業所などを広くつなぐネットワークの整備を」と訴えます。
防災の三本柱「自助」「共助」「公助」のうち、まずは「自助」、各家庭で準備することが基本。「備えあれば憂いなし」です。ですが、「公助」なくして安全安心の避難は難しいのです。
演台狭しと動き回り、時には参加者に質問を投げかけながら、パワフルにお話をされた高橋さん。
参加者の方々も、深く頷いたり熱心にメモをとったりしながらの聴講で、密度の高い2時間の講演会となりました。
◎高橋みかわさんの著書はこちらです
東日本大震災以来、さまざまな方にお話を伺い、情報を収集する動きを続けていた中で実現した、高橋さんの講演会でした。このような出会いとつながりがもてたことに感謝し、これからもぴっぴとして、防災のためにできることを考え実施していければと考えています。
◎中日新聞1月29日掲載(中日新聞社許諾済)
(ずきんちゃん)